実際に保険を使ったことがある方に、
そのときのエピソードや状況など、話を聞いてきました。
Interview07 保険のおかげで経済的不安はなく、がんと向き合えています
Profile
斉木裕次郎さん(仮名)(65歳)
夫婦二人暮らしの裕次郎さん(仮名)。
「スキルス性胃がん」と診断され、余命宣告を受けました。
がんに気づいたきっかけは?
2012年の夏ごろに胃の調子が悪く、食欲がなかったのでしばらく市販薬を飲んでいました。1ヵ月くらい様子を見ていたのですがまったく効かず、家族から「胃潰瘍かもしれないから病院で診てもらったほうがいい」と言われ、病院に行くことにしました。
告知はどのように受けたのですか?
胃カメラなど一通りの検査を受け、検査結果が出るまで1ヵ月程待ちました。検査結果は娘とふたりで聞くことにしていましたが、私が早く病院に着いたため、ひとりで告知を受けました。そこで「スキルス性胃がん」(※)と知り、「胃を半分切除する」と言われたんです。
もちろんショックはありましたが「がんなんて切除すれば治るだろう」くらいにしか思っていませんでした。あとから来た娘はびっくりした様子で、お医者さんにいろいろと聞いていましたね。
※胃がんの中でも、悪性度の高いがん。発見が難しく、治療が困難なタイプと言われている。
告知後はすぐに入院されたのですか?
検査結果が出たあとに、病院で紹介状を書いてもらいがんセンターで再検査をしたのですが、胃をすべて摘出する必要があると告げられました。また、がんの転移はお腹を開けてみないとわからないと聞いたときはショックでしたね。そこからさらに、体が手術に耐えられるかを検査し、入院となりました。
手術後の経過はどうでしたか?
通常のがんの摘出手術だと1ヵ月から1ヵ月半で退院できるそうですが、私の場合は発熱や手術痕の腫れ、痛みなどがあり、3ヵ月の入院となりました。結局、手術ではすべてのがんが摘出できなかったので、年明けに抗がん剤治療をすることになりました。
抗がん剤治療はどのようなことをされたのですか?
治療の際に「CT」を撮ったところ膵臓への転移が見つかり、余命宣告を受けました。「このまま何も治療をしなければ3ヵ月、抗がん剤を使っても半年から9ヵ月くらいしかもたない」とのことでした。
抗がん剤治療は1ヵ月を一周期としたもので、3週間は「TS-1」という抗がん剤のカプセルを自宅で飲み、月に1度は「シスプラチン」という抗がん剤の点滴を3、4時間かけて打つことになります。シスプラチンは腎臓へのダメージが大きいので、ダメージを減らすために尿をできるだけ多く出して、シスプラチンを3日くらいかけて洗い流します。ほかにも準備などを含めると、1回の点滴治療で1週間から10日間の入院が必要となります。
抗がん剤治療による副作用はありましたか?
人によってさまざまらしいのですが、私は抗がん剤の副作用が強かったようです。抗がん剤治療を始めたころは髪が抜け、吐き気が強く、「死ぬ思いとはこのことか」というくらいつらかったです。
また、食事が摂れないので体力が低下してしまい、1月末には救急車で運ばれ緊急入院しました。点滴などの治療をして退院したときは、地獄から這い出てきたような心境だったのを覚えています。
ほかに副作用はありましたか?
味覚障害が出てきました。味がわからなくなるので、比較的刺激があるものが食べたくなってきます。また、口内炎ができやすくなり、食べてみないとわからないのですが、食べ物によっては下痢をしてしまうこともあります。
胃を摘出しているので、食べる量は以前の3分の1程度、お寿司でいうと4貫くらいに減りました。体重は20kg落ちましたね。食べられないことが一番つらいのですが、逆に食べることに執念を燃やすようになります。
現在、体調のほうは?
抗がん剤の副作用によって日々の体調はまったく異なるのですが、現在は比較的落ち着いています。髪は薄くなったものの、再度生えてきていますし、少しでも食べると体調は安定するので、1日5、6食、食べられるときに食べるようにしています。
どのような保険に加入されていましたか?
入院日額5,000円のがん保険に加入していました。診断給付金と通院給付金の特約はつけていませんでしたが、手術給付金は50万円給付されました。実際の手術にかかった費用は15万円くらいでしたので、貯蓄もできました。また、「抗がん剤特約」をつけていたので、毎月50,000円給付されています。月々の保険料は5,000円くらいですから、治療費に関する苦労はないですね。がんと告知されて経済的にとても心配でしたが、保険が心の支えになりました。
保険は、いざ自分が保険金や給付金をもらう立場にならないと、本当の重要性は気付けないと思います。最近はさまざまな商品があるようですし、心配な方は加入や見直しの検討をおすすめします。
今の心境を教えてください。
私は手術と抗がん剤治療をしていますが、中には手術も抗がん剤治療もできず、痛みを和らげることに特化した「緩和ケア病棟」に入院される方もいます。最終的に、がんが進行した場合は緩和ケア病棟に行くことになるかと思うと、いろいろ考えてしまいますね。自分が不安定になると、家族がより不安になってしまうので、気持ちを抑え、気を強く持つように心掛けています。
がんと告知を受けたときは特にそうでしたが、「覚悟を決めなくてはいけない」という気持ちが強くあります。また、こうして治療を受けていると、同じように余命宣告を受けた方で宣告された期間より長く生きている方にもお会いします。そういった方を見ていると、皆さんやはり食事をすることで体力を維持しているように思います。私もできるだけ食べて、家族のためにも死ぬまで元気な顔をしていたいですね。